2024/02/14 09:48
1900年代、民芸運動が起きると今まで注目されていなかった日用品や身近な道具にも美が宿っていると認識され始めました。
現代では手仕事や職人の技術が再評価され、手作りのものは素晴らしい、天然素材のものは貴重で良いものだと言われています。
一方、化学繊維、化学染料や工業製品は環境負荷の点からも見直されつつありますが、化学や機械の進歩が多くの人に恩恵をもたらした事実は計り知れず、天然素材や手仕事のみを持ち上げる風潮には疑問を感じます。
天然染料の定義、オーガニックの定義、工芸品の定義、様々な分野で定義について議論になっています。
個人的には、本来どちらが良い、悪いの対立構造ではなく、どちらも選択できることが豊かさにつながってくるのではと思います。
例えば作り手としては、
植物から染料を取って、染まりやすいように少し化学薬品に頼る、和紙の工程で力作業の部分は機械に頼る、手織りの布の一部は機械織りを使う。
これらは伝統的な手法からは少し外れますが、現代技術と伝統技術を組み合わせることでものづくりの幅が広がることは決して悪いことではありません。
こういったいわゆるお互いの良いところを取ったハイブリット的なものづくりがこれから増えてくるのではと感じます。
消費者としては、普段は化学繊維の服を着ているけど、寝具は天然素材を使いたい、日用品の一部は手仕事のものを取り入れたい、そんな方もいるのではないでしょうか。そういった多様な生き方に寄り添うためには多様な選択肢があってこそだと思います。
選択肢がひとつしかない世界はきっと窮屈に感じるだろうと想像します。
100%伝統的な製法でものづくりを行うことも素晴らしい、工業製品も日常を支える大切なものとして残っていて欲しい。
それらを組み合わせて身近に手に入れられる値段で提供することも人の知恵のひとつではないでしょうか。